宗教の概念や思想にとらわれない自由な形式の『無宗教葬』の概要と流れの例

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宗教の概念や思想にとらわれない自由な形式の『無宗教葬』の概要と流れの例

1)無宗教葬とは?

無宗教葬?

無宗教葬とは特定の宗教や慣習に制限されない自由な形式で行う葬儀のことを指します。
現代ではこれらを総称して「無宗教葬」や「自由葬」などと呼びます。

故人らしい葬儀を自由に行えるのが、無宗教の葬儀の大きな特徴です。
宗教儀礼に従って行う必要がないため「宗教に対する信仰心がない」「自由な形式の葬儀を行いたい」という方が選択することが多いようです。

どのようなことを行うか

無宗教葬は宗教の概念や思想にとらわれず、自由な形式で執り行います。
自由とは言いますが、一般的には 故人が好きだった音楽を流す、生演奏・合唱をする 、スライドショーや動画を見ながら故人の思い出を語る、故人の趣味や、思い出の品の展示をするなどが多いようです。

無宗教葬の気を付けるべき点

無宗教での注意点は「菩提寺との関係」、「家族・親族の同意」、「対応可能な葬儀社の選定」になります。

①菩提寺との関係性

菩提寺がある方は自由葬を行う場合は特に注意が必要です。
通常代々の菩提寺があれば菩提寺から戒名をもらわないとお墓に納骨させてもらえないことがほとんどです。
菩提寺は檀家制度によって寺院を維持しています。
そのため戒名を得て檀家になることが条件で納骨できます。
菩提寺があってなおかつ無宗教で葬儀をしたいという場合には、事前に菩提寺とよく話合いを行わなければトラブルになる可能性もあります。

※菩提寺ではなくて、公営墓地や宗教不問の民間墓地であれば何の問題もおきません。

②家族・親族の同意

自分が無宗教葬を希望する場合は生前に、家族や親族とよく話し合い、同意をもらっておくことが大切です。
無宗教葬はまだまだ、認知されておらず一般的ではありません。
家族や親族の理解が得られなければ行ってもらうのは難しいと言えます。

特に、菩提寺があるような場合、「うちでは代々あの菩提寺に来てもらって葬儀をしている。このような葬儀は認めない」と親族から意見がでることは当然に予想されます。
無宗教葬を希望する場合は、菩提寺だけでなく、家族・親族で事前によく相談しておくことが重要です。

現状において、あまり多くないこと(無宗教葬)をやろうとすれば、それなりに労力が必要になると思ったほうがいいでしょう。
このことは、上記の2つをクリアしたとしても、下記に述べるように式の構成・進行もよく考えておいたほうがいいからです。

③対応可能な葬儀社の選定

無宗教の葬儀は自由であるがゆえに難しさがあります。
特定の形式がないため儀式のあらゆる内容、段取りを親族、自分自身が考える必要があります。
一般的には、焼香の代わりに献花を行い、祭壇は白木ではなく生花でつくり、遺影を飾り、音楽を流すことが多いようです。

自由葬の実績がある葬儀社であれば形式や儀式の内容について過去の実績を元にアドバイスをもらうことができるでしょう。
しかし、現状無宗教葬に慣れている葬儀社は決して多くはありません。

現状葬儀会社の調査結果では、無宗教葬が実施された実績は全体の10%程度と言われています。
葬儀全体に占める無宗教葬の施行割合が少ないということは、無宗教葬に慣れている葬儀社も当然少ないということになります。

納得のいく無宗教葬にするためには、無宗教葬の実績がある葬儀会社に依頼することが大事です。
そうしたところでは、依頼者の無宗教葬のイメージを喚起するように様々な提案をしてくれ、また、会葬者も納得いく葬儀プランを提案してくれるでしょう。

2)葬儀に法律上の決まりはないの?

具体的に葬儀の内容を規制するような法律はありませんが、葬儀に関係する内容の法律は存在します。

葬儀に関連する法律としては、「墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年五月三十一日 法律第四十八号)」が代表として挙げられます。

第一条には「この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。」とあり、墓地・埋葬・火葬についての規定が書かれています。

しかし近年、葬儀内容や、人々の宗教感の多様化に伴い、法律の想定していなかった問題も生じています。

①エンバーミングについて

エンバーミングとは、遺体の防腐処置です。
遺体に薬品を注入して、腐敗しないよう処置を行います。
また、事故死などで外傷が見られる場合にはその箇所を復元したりします。

エンバーミングは、例えば火葬の日程が合わず、遺体をある程度の期間保管する必要が生じた場合に施されたりします。
このように遺体の劣化を防ぐのは、感染予防の目的もあります。
伝染病等にかかったまま亡くなった場合はもとより、人間は生きている間にも体に様々な菌を持っており、死亡することによって増殖して感染の危険性が高まります。
エンバーミングを行うことによってその増殖を抑制することができます。

現在、日本国内においてエンバーミングに関する法規制はありませんが、道徳的・公衆衛生的に節度を持って行われる必要があります。
国内では「日本遺体衛生保全協会(略称・IFSA)」が一定の基準を設けています。

エンバーミングの基準について

このように一定の技術・倫理基準を満たしている必要があります。
費用については15万円~で遺体の損傷具合や、どの程度の期間劣化を防ぐのかによっても代わります。

専門家のワンポイントアドバイス!

似ている言葉に「エンゼルケア」というものがあります。
エンゼルケアは、病院などにおいてご遺体を綺麗にすることを目的としたものです。
お顔やお体を脱脂綿で消毒し、口や鼻、耳や目などから体液が漏れないよう脱脂綿で塞いだりします。
また男女問わず、状況に応じて薄化粧をする場合もあります。
費用は数千円程ですが、病院によっては数万円になる場合があります。

②散骨について

テレビなども放映されて認知されるようになりましたが、現在は海洋散骨や樹木葬などが一般に行われるようになっています。
散骨を考える際に故人の身体の一部を粉砕して自然に還すことが、遺骨遺棄等に該当しないかという点ですが、これに関しては政府見解で「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り遺骨遺棄罪に該当しない」と正式発表されています。

注意すべきは陸上での散骨で、これが埋葬に当たるか判断に様々な見解があります。
「地上にある限りは埋蔵ではないが、その上に風で運ばれた砂埃や落ち葉等がかかれば埋蔵とみなすことができる」とする見解があり、これによれば墓埋法に定める「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。」とした第四条により、墓地として認可を受けた場所以外での散骨はできないことになります。

散骨費用は数万円という業者も多く、実際に散骨を業者に委託して遺族は立ち合いがないというケースもあります。
それだけ宗教観や、家族間の関わりというものが変化しているということが現れていると言えます。

専門家のワンポイントアドバイス!

二点補足。
「一つ目のポイントは、散骨は、法律的にはあくまでグレーゾーンで行われているということを認識することです。
そのため、中途半端な知識で行ってしまうと、罰せられるだけでなく、地主や地域住民から損害賠償請求される可能性もあります。
散骨を希望する場合、専門業者などにしっかりと相談してから実施しましょう。

二つ目は、家族だけでなく親戚一同に事前に了解を得ておくことです。
「家族だけは説得したから大丈夫」と思っていると、亡くなった後に、家族が親戚から責められることになります。
「お墓参りができない」これがクレームの理由です。残される家族に対する思いやりの心を忘れないでください。

3)無宗教葬の流れの例

無宗教葬の流れ?

無宗教の葬儀の流れは、仏式の葬儀から宗教色を無くした形式を基本とすることが多いようです。
実際はかなり自由に行われていますが、事例として次の形式をご紹介します。

①開式の言葉

司会者によって開式の言葉が述べられます。

内容は遺族と打ち合わせして決めることが多いようです。

②黙祷

お経を読む代わりに故人を偲んで黙祷を行います。

③献奏

故人と家族の思い出の曲を会場でかけたり、バンドによる生演奏をする、というのもあります。
会葬者で合唱をするという葬儀もあるようです。

④故人の経歴紹介

経歴紹介のほか、故人が残したメッセージなどが読まれることもあります。

⑤スライド・ビデオの上映

故人との思い出を基にしたパワーポイントのスライドやビデオを上映します。

故人との写真や、直筆の手紙などを映し出して故人を偲びます。

⑥別れの言葉

遺族代表や友人代表など故人とゆかりのあった人がお別れの言葉を述べます。

⑦献花

焼香の代わりに献花を行います。

⑧閉式の言葉

これを述べて式が終了となります。

現代葬儀はこの先も多くの新しいスタイルが生み出されることになるでしょう。
しかし、これまでの仏式葬儀というものが、無くなるわけではなく故人を偲ぶ最もいい形の葬儀として、残っていくことになると言えます。

このページを監修してくださった専門家の方

齊藤学 写真
行政書士齊藤学法務事務所
行政書士 齊藤 学

遺言・相続・成年後見・ペット信託、民事信託を活用した財産管理・承継対策、ビザ(VISA)申請取次という「民事系の業務」と法人設立業務、WEB利用規約等各種契約書関係、記帳代行、許認可申請という「法人業務」を取り扱っております。

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