特別受益と寄与分

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特別受益と寄与分

相続人が故人から生前に贈与を受けていたり、相続が始まった後に遺贈を受けていたりした場合に、相続ではその分についても考慮する必要が生じます。
また被相続人に対し、生前に特別な働きをした人も同様のことが言えます。
被相続人が特別に何かしらの利益を受けている場合の、相続の手続きについてを紹介します。

1)特別受益と寄与分を考慮する?

特別受益と寄与分?
寄与分について

相続を行うときは、特別受益と寄与分を考慮する必要があります。
特別受益というのは、相続人が被相続人から生前に贈与を受けていた場合のことです。
寄与分とは、生前に被相続人に対して特別なことを行った相続人のことを指します。
被相続人に対して、プラスになるような働きをしたケースが寄与分となります。
寄与分はその寄与の大きさにより、他の相続人と比べてより多くの額を相続できるシステムです。
ちなみに民法では寄与分に該当するケースとして、以下の4つの方法を掲げています。

上記の事項に該当する場合は、実際の相続財産より寄与分を差し引いた額を基準にして、それぞれの相続人の相続分を計算することになります。
そして最終的に寄与がある相続分に対して、その分の寄与分をプラスします。
生前の被相続人に貢献した方は、その度合いによって多くの額を相続できますが、この寄与分については裁判を起こすことはできません。
寄与分そのものは相続人同士の協議によって決まり、その話し合いに不満があるなど満足できなかった場合には、家庭裁判所に対して調停や審判を求めることになります。

反対にその寄与分の内容に対して不満がなければ、特に考慮する必要はありません。
要するに該当する本人が寄与分の内容について納得していれば、それで問題は無いということです。
寄与分は相続の際に大切な要件と言えますが、この権利は相続人だけに限られます。
たとえ相続人以外の方が同じように特別な働きをしたと言っても、相続の際の対象となることはありません。
相続人の配偶者や内縁の妻が、生前どんなに一生懸命被相続人に尽くしたとしても、相続人と同じように寄与分の主張はできませんので注意しておきましょう。

相続人の寄与分を考慮した計算例

相続人の寄与分を考慮した相続分の計算は、以下の通りです。

寄与分を求める場合は、最初は寄与分を控除してみなし相続財産額を算出します。
そしてみなし相続財産額より大まかな相続分を計算して、その額に寄与分を加えます。
これで実際の相続分が決まります。

2)特別受益とは

特別受益について

寄与分と同じように大切なものが「特別受益」です。
特別受益というのは被相続人が故人から生前贈与受けたり、相続が始まった後に遺贈を受けたりなど、被相続人から特別に利益を受けた人のことです。
共同相続人の中に特別受益を受けた人がいる場合の相続の際に、法定相続分に従って相続分を計算してしまうと実際の持ち分が変わってしまいます そのような不公平な相続を防止するために、民法では903条の中で特別受益の例を規定しています。
特別受益を考慮した計算で算出された相続分が、具体的な相続分となります。

特別受益の対象事項

民法では特別受益について規定していますが、具体的にはどのような事項が特別受益の対象となるのでしょうか? 民法903条では、遺贈、婚姻、養子縁組や生計の資本になる贈与を規定しています。
以下でそれぞれの項目を紹介します。

遺贈

遺贈は遺言書でも記載されることがありますが、そのような実質遺贈も特別受益に該当します。

学費

普通教育以上の高等教育を受けるために必要な学費、これも特別受益に該当します。
ただ被相続人の生前の資本力や生活レベルなど、その出費がその家庭の通常レベルであれば特別受益から除外されます。
さらに他の共同相続人についても同じような環境であれば、特別受益に該当しません。

生計資本の贈与

生活するための土地や建物贈与、あるいはその不動産の購入資金のための贈与なども、特別受益に該当します。
同時に事業を行う際の開業資金の贈与も、特別受益となります。

土地や建物の無償使用

生前、故人が保有していた土地や建物を無償使用している場合も特別受益になります。

生活費の援助

生活費については、それが扶養義務の範囲内であれば特別受益には該当しませんが、その範囲を超えたときは特別受益となります。

特別受益の計算方法

相続の際に特別受益が存在する場合は、実際の相続分の計算方法が変わってきます。
特別受益を受ける相続人が法定相続分以上の特別受益がある場合も、同じように計算の方法が変わります。
具体的な計算方法は、以下の通りです。

特別受益の受けていない相続人

(相続財産+贈与額)×法定相続分

特別受益を受けた相続人

(相続財産+贈与額)×法定相続分-贈与額や遺贈額または両方

3) 特別受益の持ち戻しの計算方法

計算方法

相続を行う際に預貯金などの資産が生前贈与された場合は、その贈与額を現在の貨幣価値に評価替えする必要があります。
特別受益の持ち戻し計算をする場合には、遺産総額に受益した分の財産を加算します。
法定相続人の中に生前に被相続人から特別受益を受けた者がいる場合は、特別受益の持ち戻し計算を行い、そのときの遺産と受益分の合計額がみなし相続財産となります。
そのみなし相続財産を、法定相続分に従って相続人全員で分配することになるのです。
その際に受益者の取得分については、特別受益の分から差し引かれます。
特別受益の持ち戻し計算の具体例としては以下のようになります。

あくまで例として、故人に配偶者と子供3人がいる場合を想定し、遺産の総額が5000万円のケースで計算する方法です。
まず長女の婚姻のために、1000万円を生前贈与されたと仮定します。
この場合は、その長女の特別受益分である1000万円については、持ち戻し計算する必要があります。
その場合のみなし相続財産は、【5000万円+1000万円】で6000万円となります。
そしてその5000万円のみなし相続財産については、法定相続分に従って計算を行います。

法定相続分については配偶者が1/2、子供の3人がそれぞれ【1/2×1/3】ということから1/6になります。
このうち配偶者の相続分については【6000万円×1/2】で3000万円、長男は【6000万円×1/6】の1000万円、次男は【6000万円×1/6】の1000万円です。
そして長女の相続分については、【6000万円×1/6-1000万円】で0円となります。
以上のように特別受益の持ち戻しの計算をすると長女の受益分が正当に評価され、各自に公平に配分されます。
特別受益の持ち戻しの計算をすることで、相続全員が平等に遺産相続できるようになります。
特別受益がある方は実際に確認しておいた方が、後々のためになるでしょう。

相続を行うときは、特別受益と寄与分を考慮する必要があります。
このうち特別受益については、現在の貨幣価値に評価替えしなければなりません。
それが特別受益の持ち戻しの計算であり、この計算によってすべて相続人が公平に遺産を相続できるようになります。

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