故人が厚生年金に加入していた際の手続きを紹介

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故人が厚生年金に加入していた際の手続きを紹介

一家の大黒柱となっていた方が亡くなった時、残された遺族にとって頼りになるのが遺族年金です。
遺族年金には様々な種類がありますので、自身がもらえる年金の種類、受給額、受給要件などは前以って調べておくに越したことはありません。
故人が厚生年金に加入していた際の、手続きなどを紹介します。

1)遺族厚生年金を受給できるのは?

遺族厚生年金を受給できるのは?

遺族厚生年金を受給するためには、亡くなった方が以下の条件に該当している必要があります。

以上4つの条件の、いずれかを満たしていることが必要です。

また遺族厚生年金を受給するには、保険料を滞納することなく納めていることは必須です。
遺族厚生年金の受給要件として、具体的には亡くなった方の保険料納付期間(保険を免除された期間を含む)が、国民年金加入期間の3分の2以上であること、あるいは死亡日の前々月までの過去1年間のうちに保険料を滞納していることがないことが重要となります。

ただ1年間滞納がない要件については故人が死亡日に65歳未満であること、または(平成38年)2026年までの特例にも注意しておきましょう。
実際に厚生年金に加入している間は、会社から自動的に年金保険料が差し引かれますので、滞納という概念は原則としてありません。
しかし会社の厚生年金に加入する以前に、国民年金の滞納がある方は注意する必要があります。
過去に滞納期間がある方でも、2年間(平成24年10月~平成27年9月までの間に限っては10年前まで)未納があった方は遡っての納付も可能です。
後から納付できることが許されているため、まずは滞納の有無を確認し、もし滞納があれば早めに手続きしておきましょう。

次に遺族の要件についてです。
実際に遺族厚生年金を受給できる方は、亡くなった方が生計を維持されていたことが条件です。
その上で下記の方が該当します。

この中で優先順位の高い方から順に支給されます。
遺族厚生年金は遺族基礎年金とは異なり、受給できる範囲が広いのが特徴です。
また子供がいない配偶者も受給できます。
しかし夫が死亡した子供がいない30歳未満の配偶者の場合、受給できる期間は5年間だけとなります。
さらに父母や祖父母にも年齢要件があります。
55歳以上だった方は、60歳になった時から受給できます。

そして子供のいる配偶者や子供は、遺族厚生年金の他に遺族基礎年金も併せて受給できます。
しかし子供のいない配偶者は、遺族基礎年金は支給されませんので注意しておきましょう。
中でも40歳以上の配偶者の方は、65歳になるまで遺族厚生年金に定額の中高齢寡婦加算が加算されて支給されることもあります。
遺族厚生年金はとにかく複雑ですので、早めに知っておきましょう。
また自身が受給できるのか不安な方は、社会保険労務士などの専門家に問い合わせてください。

2)子のない妻などへは加算がある?

遺族厚生年金には、中高齢寡婦加算という制度があります。
これは一定の要件を満たして遺族になった妻の遺族厚生年金に加算される制度であり、65歳までの有期年金です。
なお妻が死亡した場合は、夫には支給されません。
中高齢寡婦加算の受給要件を満たした方(昭和31年4月1日以前に生まれた方)は、65歳以降に経過的寡婦加算を受給できます。

3)65歳以上の配偶者は2つの年金

遺族厚生年金は、65歳以上の方は注意する必要があります。
と言うのも65歳からは老齢年金もあるからです。
遺族年金の支給方法は、65歳になる前と後からでは大きく変わってきます。
平成19年4月より、65歳以上の方で老齢厚生年金の受給資格がある配偶者が遺族厚生年金を受給する際には、配偶者自身の厚生年金が掛け捨てになるのを防止するため以下の方法が行われています。

該当する方は、自分自身の老齢厚生年金を全額受給した上で、遺族厚生年金については老齢厚生年金との差額分だけを受け取ることができます。
つまりは、65歳以上の配偶者には2つの年金が該当しますので、注意深く観察しておく必要があります。
原則、同時に2つの年金をもらうことはできませんので、65歳前になったら自分の年金を受け取るか、それとも遺族年金を受け取るかを選択する必要があるのです。

4)遺族年金の受け取り方と額

遺族年金の受け取り方と額
①高校生までの子がいる妻

遺族厚生年金の金額は、加入者本人が受け取れるはずでだった報酬比例部分の3/4になります。
加入者の標準報酬月額が30万円の場合で約48万円、また標準報酬月額が40万円の場合は約65万円ほどです。

②子のいない40歳未満の妻

子がいない場合は遺族基礎年金はなく、遺族厚生年金だけが支給されます。
この場合、亡くなった方の標準報酬月額が30万円であった場合の年額は約48万円程度、標準報酬月額が40万円であれば約65万円程度です。
ですので遺族基礎年金の月額は4~5万円程度と見ておけばいいでしょう。

③子のいない40歳以上の妻

妻が40歳以上65歳未満である場合は、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算も加わりますので、その分支給額は増えることになります。
中高齢寡婦加算額は「40歳以上65歳未満の方で、生計を同じくしている子供がいない妻」に対して支給され、年額で584,500円が加算されます。

これら遺族厚生年金は地元の年金事務所に申請する必要があります。

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補足

遺族厚生年金については、平均標準報酬月額367,000円、老齢基礎年金は、40年加入とした場合のモデルケースのシミュレーションです(厚生労働省資料より抜粋https://www.mhlw.go.jp/shingi/0112/s1214-4e6.html)。

①厚生年金加入の夫が死亡した時点で妻に18歳未満の子(一人)がいた場合
夫死亡~子が18歳到達 子が18歳到達 妻40歳~64歳 65歳以降
年金支給13.9万円/月
(内訳)
遺族厚生年金(4.9)
遺族基礎年金(6.7)
子の加算(2.3)
年金支給9.9万円/月
(内訳)
遺族厚生年金(4.9)
中高齢寡婦加算(5.0)
年金支給11.6万円/月
(内訳)
遺族厚生年金(4.9)
老齢基礎年金(6.7)
②厚生年金加入の夫が死亡した時点で妻に18歳未満の子がいない場合

ⅰ)夫死亡時、妻が35歳未満の場合

夫死亡~64歳 65歳以降
年金支給4.9万円/月
(内訳)
遺族厚生年金(4.9)
年金支給11.6万円/月
(内訳)
遺族厚生年金(4.9)
老齢基礎年金(6.7)

ⅱ)夫死亡時、妻が35歳以上の場合

夫死亡~39歳 40歳~64歳 65歳以降
年金支給4.9万円/月
(内訳)
遺族厚生年金(4.9)
年金支給9.9万円/月
(内訳)
遺族厚生年金(4.9)
中高齢寡婦加算(5.0)
年金支給11.6万円/月
(内訳)
遺族厚生年金(4.9)
老齢基礎年金(6.7)

5)遺族厚生年金を受給できる人

実際に遺族厚生年金を受給できる方は、以下の方です。

6)厚生年金の遺族給付

遺族厚生年金(受給要件・提出先・添付書類)

受給要件は以下の通りです。

必要な書類は以下の通りです。

専門家のワンポイントアドバイス!
補足
中高齢寡夫加算(受給要件・提出先・添付書類)

中高齢寡夫加算の受給要件は以下の通りです。

必要な書類は遺族厚生年金と同じですので、受給する方は確認しておきましょう。

7)老齢年金と遺族年金の受け取り方

老齢年金と遺族年金は年金事務所に申請して受け取ることになります。
年金額について不明な点がある方は、年金事務所に相談すると細かく知ることができるでしょう。

故人が厚生年金に加入していた場合の、遺族厚生年金は申請にも手間がかかります。
受給要件や受給資格もありますので、事前にしっかりと確認しておかないといざという時に慌てることになります。
一般人には分かりにくいことが多いかもしれませんが、年金事務所に相談をして最も割りの良い方法で手続きしましょう。

このページを監修してくださった専門家の方

齊藤学 写真
行政書士齊藤学法務事務所
行政書士 齊藤 学

遺言・相続・成年後見・ペット信託、民事信託を活用した財産管理・承継対策、ビザ(VISA)申請取次という「民事系の業務」と法人設立業務、WEB利用規約等各種契約書関係、記帳代行、許認可申請という「法人業務」を取り扱っております。

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